冬コミの本に記事が載りました。「スタンダードの歴史 「テーロス」ブロック&「タルキール覇王譚」ブロック 発売日~世界選手権」
 どーもこんにちわなのん。

 本日の冬コミにて、チーム「ミギノテ☆ソリューション」がMTG本出すと言うのでスタンの歴史書いた記事を書きました。
 そしたらなんか売り切れたらしいです。未熟者さんすげぇや、どんな手法使ったんだろう。

 んで、まぁ読みたいと言う人がいるらしいので、一応掲載許可貰って寄稿したものをブログにも載せようってことになりました。
 書いたのはスタンダードの歴史(タルキール発売日~世界選手権)のことです。
 寄稿時期の問題で、世界選手権のことまでしか書けてないので今読むとちょっとだけ古いかもしれません。
 そして締め切り三日前、しかも講義中の間だけで急いで書いたので結構適当というか日本語おかしいところあると思います。なんか誤字脱字とかあるかもです。
 感想とかめっちゃ欲しいんで出来たらコメントお願いします。もちろんおかしいところとかあったら是非お願いします。
 それでは以下から。

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0.はじめに
 どうも、大体の人ははじめまして。すばらと申します。
 この記事ではマジック:ザ・ギャザリングのフォーマットの一つ、スタンダード(「テーロス」ブロック&「タルキール覇王譚」ブロック)の歴史について書かせていただきたいと思います。
 2014年9月26日に「タルキール覇王譚」が発売され、それまでスタンダードに存在していた「ラヴニカへの回帰」ブロックはスタンダードの舞台から姿を消すことになりました。俗に言うスタン落ちというものです。それによって、スタンダードで使えるカードプールは激変し、環境は大きく変わることになるのです。それでは、「タルキール覇王譚」が発売されるちょっと前から歴史を振り返ってみたいと思います。

1.フルスポイラー公開~10月第1週
 2014年9月12日。
 「タルキール覇王譚」が発売される2週間前に、収録カードが全て公開されました。
 フェッチランドの再録をはじめとして、《龍語りのサルカン》や《真面目な訪問者、ソリン》ら過去のプレインズウォーカーが新たなるテキストでの収録。単色のデッキの活躍が目立った前環境とは一変した3色推奨環境。今まで猛威を振るってきた「ラヴニカへの回帰」ブロックのカードの《群れネズミ》や《至高の評決》、《スフィンクスの啓示》といったスタンダードの舞台から退場するカードの代わりはいるのか。同じく前環境で活躍しており、スタンダードに残り続ける《アスフォデルの灰色商人》や《波使い》、《ニクスの祭殿、ニクソス》らの相方となれるカードはあるのか。スルスポイラーが公開された直後から様々な議論がプレイヤーの中で交わされるようになりました。

 フルスポイラーが公開された直後に出てきた意見として多いように感じたのは、やはり前環境に比べると除去やカウンターといった妨害手段が少ない、または弱いといったものでした。それまで低速コントロールというデッキタイプそのものを支え続けた《至高の評決》が退場する代わりに新しく入った全体除去は《対立の終結》と1マナ重くなったものでした。また、単体除去も2マナ帯のもので《肉貪り》《究極の価格》といった実用レベルのカードは皆無であり、カウンターも《軽蔑的な一撃》や《精神振り》という縛りがやや厳しいカードばかりでした。
 他には、3色推奨という性質からテーロスブロックの強力であったキーワード能力「信心」を活かせるカードが少ないという意見も非常に多く見受けられました。《夜帷の死霊》や《ボロスの反攻者》といったトリプルシンボルのカードは存在せず、ダブルシンボルのカードであっても《冒涜の悪魔》や《凍結燃焼の奇魔》といった使いやすいカードは「タルキール覇王譚」には存在しませんでした。これによって、前環境を象徴すると言っても過言ではないほどのパワーカード《アスフォデルの灰色商人》と《波使い》を今までと同じような使い方をするのは難しいと思われました。

 しかし、ないものねだりをしていても仕方がありません。プレイヤー達は新たなる新環境に向けて、手探りで新しいデッキを模索し始めました。
 ここで参考になるのはテーロスブロック構築で行われたプロツアー『ニクスへの旅』の結果や前環境での環境デッキでしょう。次の環境でもそのまま使えるテーロスブロックのカードをベースにしつつ、「タルキール覇王譚」のカードを試し始めたのでした。
 最初の頃は「タルキール覇王譚」発売直前のスタンダード環境で猛威を振るった《ゴブリンの熟練扇動者》を中心した赤系スライか、テーロスブロック構築では多くのデッキに採用された《森の女人像》《クルフィックスの狩猟者》の二枚看板をベースとし、《嵐の息吹のドラゴン》や《世界を喰らう者、ポルクラノス》、《世界を目覚めさせる者、ニッサ》などテーロスブロックと基本セット2015のカードが中心であり、高い完成度を保ったまま生き残った緑絡みミッドレンジのデッキを組み始める人が非常に多かった印象があります。
 また、「タルキール覇王譚」が発売される前に開かれた先行大会では《真面目な訪問者、ソリン》を採用した黒タッチ白アグロと、マナを生み出すクリーチャーと《ニクスの祭殿、ニクソス》を採用した緑青信心が優勝しました。この大会によって《真面目な訪問者、ソリン》と緑系信心への評価が見直されました。特に《龍語りのサルカン》に比べると印象が薄かった《真面目な訪問者、ソリン》への評価が大きく変わったことが大きく、アグロデッキではもちろんのこと、マルドゥ(赤白黒)やアブザン(白黒緑)といった白黒が絡むミッドレンジなどでシナジーをあまり気にせずに単体で採用しても十分な性能を持っているという認識に変わっていったため、発売直前にそれまでの予約価格と比べて1000円近くの値上がりが起こるほどでした。

 発売直前にすでに大きく波紋を生み出していた「タルキール覇王譚」が発売されると、多くの人が新たなるスタンダードのデッキ構築のためにカードを求め始めました。最初の頃はやはり長らく待ち望まれていたフェッチランドの人気が非常に大きく、パックを買った人の中でもどれだけフェッチランドを引き当てることが出来たか等で話が大きく盛り上がりました。(一部の人は闇を背負い込む羽目になっていましたが……)

 そして発売から一週間後、「StarCityGames.com」の主催する大規模大会Open Seriesがニュージャージー州とインディアナ州にて開催されました。「タルキール覇王譚」発売後はじめての大きな大会ということもあり、普段より大きく注目を浴びる大会になります。
 ニュージャージーの方で優勝を収めたのは前評判の高かった赤単スライや緑系ミッドレンジではなく、《カマキリの乗り手》という優秀なクロック要因と《ジェスカイの魔除け》などのバーン要素を上手く組み合わせたジェスカイ(青赤白)テンポというデッキでした。前環境でもバーンデッキ自体は環境トップの一つとして君臨していましたが、《戦導者のらせん》などの優秀なパーツが軒並み退場したために今環境でも同じように組み上げるのは絶望的だと見られていました。しかしこのデッキでは青を採用して《カマキリの乗り手》をとることによって、テンポデッキとして成り立ったのです。
 また、コストが重いと見られていた《時を越えた探索》の探査コストも案外すぐに貯まるということが明らかになり、この大会は《カマキリの乗り手》と《時を越えた探索》、ひいては探査というキーワード能力の評価の再認識、そして手探りだったスタンダード環境にジェスカイテンポというアーキタイプを広めた大会として非常に重要な日だったと今でも思います。
 もちろん注目されたのは優勝したジェスカイテンポだけではありませんでした。準優勝を収めた《ゴブリンの熟練扇動者》や《軍族の解体者》といった優秀なカードを多数採用したマルドゥミッドレンジも、この大会を機に環境デッキとして認識されるようになりました。

 インディアナ州インディアナポリスの方で開かれた大会で優勝を収めたのはアブザンリアニメイトでした。こちらはマナを大きく伸ばし、《エレボスの鞭》で《女王スズメバチ》ら大型クリーチャーを蘇生する、またはそのままプレイして相手を押し潰すというデッキです。《死滅都市の悪鬼》や《残忍な切断》といった探査呪文もデッキに取り入れられており、墓地を肥やすことは《エレボスの鞭》によるリアニメイト要因を増やすだけでなく、探査呪文のコストにもなるのです。
 このアブザンリアニメイトの優勝は、この環境での《女王スズメバチ》と《エレボスの鞭》の組み合わせの強力さを示しましたが、この二枚の組み合わせが広く浸透するようになるのはもう少し後の話になります。

 ニュージャージーの方ではジェスカイテンポとマルドゥミッドレンジという緑が絡まないデッキが1位と2位を飾りましたが、ベスト32までのデッキを全て確認すると、どちらの会場でも緑絡みのデッキが非常に多いことが特徴でした。
 前環境からパーツをほとんど流用出来たので最初から完成度が高いグルール(赤緑)モンスターと緑単信心、プロツアー『ニクスへの旅』で優勝したデッキに《包囲サイ》《アブザンの魔除け》などの単体で優秀なカードをこれでもかというほどに採用したアブザンミッドレンジなど、この先も見かけることになる主要デッキはこの時点で頭角を表し始めました。

2.10月第2週、プロツアー『タルキール覇王譚』
 「タルキール覇王譚」が発売されてから2週間が経ち、プロツアー『タルキール覇王譚』が開催されました。
 その前週のSCGinニュージャージーで優勝したジェスカイテンポが与えたメタゲームへの影響は非常に大きく、これはプロツアーでもどこまで通用されるか非常に高い期待をかけられていました。
 一方で去年のプロツアー『テーロス』ではその先週に行われたSCGでは全く見かけなかった青単信心や黒単信心が突如出てきたように、このプロツアーでどんな新しいデッキが出てくるのかを楽しみにしている人も多かったのではないでしょうか。

 そうして始まったプロツアー『タルキール覇王譚』。そこで優勝したのは、アブザンミッドレンジを使用したAri Lax氏がでした。
 Ari Lax氏を含め、トップ8にはアブザンを使用したプレイヤーが3人存在していました。しかし同じカラーの組み合わせなのにも関わらず、それらは全て違う方向に向かったデッキリストだったのです。
 特にMike Sigrist氏が使用したアブザンアグロは他のデッキとは一線を画していました。このデッキには、それまで緑絡みデッキには必ず必要だと思われていた《森の女人像》《クルフィックスの狩猟者》の二枚を採用されておらず、《羊毛鬣のライオン》や《ラクシャーサの死与え》、《荒野の後継者》に《先頭に立つもの、アナフェンザ》といった小型で強力なクリーチャーを多く採用して、とても前のめりな戦略を取るようになっていました。
 このアブザンアグロは一日目で全勝という結果を残したこともあって多くのプレイヤーの注目を浴び、後の環境にも大きな影響を与えるデッキタイプとなりました。

 当然このプロツアーを語るのに関して外せないデッキはアブザンだけではありません。SCGで優勝した形のジェスカイテンポ、名前が改まってジェスカイウィンズはこのプロツアーでは使用率トップと、最大勢力を誇るデッキとなりました。人数が多いだけでなく一日目の突破率も郡を抜いており、さらにトップ8に3名のプレイヤーを送り込むというデッキとしての強さを見せつける形になりました。
 注目するべきところは、こちらもアブザン同様に3人ともデッキに異なるアプローチを施しており、構築の自由さと環境の混沌さを物語っています。
 しかしこのプロツアーで大きく話題を呼んだのは、同じジェスカイカラーでも全く別デッキの《ジェスカイの隆盛》コンボでしょう。
 モダンやレガシーではお馴染みでも、スタンダードで本格的なコンボデッキが出てきたのは久しぶりのことです。
 《ジェスカイの隆盛》は悪用出来ることがここで判明し、それまでカスレア扱いだったこのカードはこれを機に研究されはじめ、スタンダードだけでなくモダンでも《ジェスカイの隆盛》コンボはデッキとして成り立つようになったのです。

 そしてもう一つ、青黒コントロールについても触れなければいけません。上の方でも書いたとおり、このスタンダードのカードプールではコントロールデッキは非常に厳しいという見方をしている人が大半で、実際にプロツアー『タルキール覇王譚』でのコントロールの使用率は決して高いものとは言えませんでした。去年のプロツアー『テーロス』では使用率トップがエスパー(白青黒)コントロールだったことと比べると対照的な結果だと思います。
 しかし、有名プロチーム「Channel Fireball」のOwen Turtenwald氏らがその青黒コントロールをこのプロツアーに持ち込んだことから一気に話題になりました。SCGでも評価を大きく上げた《時を越えた探索》の探査コストは意外と軽いので2枚程度なら入るだろうという考えから、4枚入れようが機能するという認識に変わっていきました。

 これらプロツアーの結果は、これから先続くスタンダード環境を定義するとても重要なものとなりました。しかし各国のプロが死力を尽くしたこの大会ですら、この環境の混沌の始まりに過ぎなかったと気付くのはそれからそう遠くない日はなかったのです。


3.10月第3週目
 このプロツアーの結果を受けて、スタンダード環境は大きく盛り上がりを見せました。当然、それからスタンダードの大規模大会の結果は多くの注目を浴びることになりました。
 プロツアー『タルキール覇王譚』から一週間後に行われたグランプリ・ロサンゼルスはスタンダードで行われ、そこで優勝を果たしたのはグルールモンスターでした。
 グルールモンスターは前環境から存在しているデッキであり、ほとんどのパーツが残る新環境でも活躍するものと思われていました。その期待に反してプロツアーでは使用率の割に悲惨な結果を残してしまい、この新環境では時代遅れではないかという評価に変わってしまいました。
 しかし、その評価はわずか一週間で覆されることになったのです。緑系ランプの戦略はプロツアー以来流行し始めたアブザンデッキに対して有効であるということが証明されたのです。プロツアー『タルキール覇王譚』の結果を経て打倒すべき仮想相手が明確に定まったことがやはり大きく、アブザンミッドレンジやジェスカイウィンズに対するメタは明確に強くなっていました。
 また、このグランプリ・ロサンゼルスでは他にもいくつか大きく目立ったデッキが存在していました。そのうちの一つは赤単スライです。中身に差異はあるものの、2位と3位を占めました。
 赤単スライといえば前環境末期で《ゴブリンの熟練扇動者》のおかげで大暴れしたことが記憶に新しく、この環境でもまた舞い戻ってきました。「タルキール覇王譚」で手に入れた新しい戦力は《僧院の速槍》と《軍族童の突発》くらいだったものの《僧院の速槍》と相性のいい軽いスペルの《タイタンの力》などが新しく投入されており、現カードプールに合わせて調整されたことが分かります。
 そしてもう一つ目立ったデッキとは、トップ8には入らなかったものの、Brian Kibler氏が持ち込んだティムール(緑青赤)ミッドレンジです。こちらも大きな話題を呼びました。Brian Kibler氏の駆るティムールデッキは、初日はなんと9-0と全勝。
 ティムールといえばプロツアー『タルキール覇王譚』では使用率も低く、上位にも少なかったためにいまいち目立たない氏族でした。しかしBrian Kibler氏は「《生命散らしのゾンビ》がいなくなった今こそ、僕の勝てるときだ!」とグランプリでティムールを使い、全勝を果たしたのです。
 二日目こそ不幸で最初の二戦を落としてはしまいましたが、ティムールでも十分に戦えることを証明したこの結果は、スタンダードに一石を投じることになりました。

 もう一つ、グランプリ・ロサンゼルスと同日にマサチューセッツ州ウースターにてSCG Openが開催されていました。そちらの方の優勝はジェスカイウィンズでしたが、こちらも同様赤単が上位に食い込んでいたり、アブザンに対して強いカードを多数投入されていた黒緑星座デッキが上位に食い込んでいたのです。
 この黒緑星座デッキは 《開花の幻霊》や《破滅喚起の巨人》といった星座要素を取り入れつつ、《ニクスの祭殿、ニクソス》や《書かれざるものの視認》といったクリーチャーを大量に展開するように仕上がっていました。中でも《女王スズメバチ》は単体除去が中心のミッドレンジ系統には滅法強く、それを早く出せる構成になっているこのデッキはアブザンミッドレンジには相性がいいと言えるでしょう。


4.10月第4週目
 続いてミネソタ州ミネアポリスでも開かれたSCG Openでも優勝したのはジェスカイウィンズでした。このジェスカイの快進撃は、デッキの完成度の高さを表しているでしょう。
 しかしこの大会の結果で大きな話題となったのは準優勝であった青白コントロールでした。前環境ではお馴染みであったカラーリングのコントロールですが、現環境になってからこの色の組み合わせが大規模大会で結果を残したのは初めてのことでした。
 とはいってもやることは古典的なコントロールデッキそのもの。《スフィンクスの啓示》こそは退場してしまいましたが、代わりにドロースペルの枠は《時を越えた探索》と《ジェイスの創意》が採用されています。

 同日に開かれたグランプリ・ストックホルムもまた優勝したのはジェスカイウィンズでした。面白いのはこちらの大会でも話題になったのは準優勝のデッキだったということでしょうか。その準優勝のデッキとは、ティムールミッドレンジだったのです。
 レシピはBrian Kibler氏のものに近く、やはりグランプリ・ロサンゼルスでの結果はメタゲームに影響を及ぼしたと言えます。
 そしてまだ取り上げていない氏族、スゥルタイ(黒緑青)もこのグランプリで上位入賞となりました。シディシウィップと呼ばれるこのデッキタイプはプロツアー『タルキール覇王譚』の時から存在はしていましたが、これまで目立った活躍はありませんでした。大規模大会での入賞は、これが初めてであったはずです。
 このときはまだ地味な存在であったシディシウィップですが、後に大きく勢力を拡大することになるのです。
 
 さて、10月第4週目と言えば日本でもBIGMAGIC OPENという大規模大会が開催されていたのです。
 筆者の私自身もこの大会には参加していました。残念ながら成績は振るいませんでしたが、まぁそれはさておき。
 この大会で優勝されたのはアブザンアグロを使用した石田 龍一郎氏でした。このアブザンアグロはそれまでのプロツアーやグランプリで見られた形のものとは少し異なり、《荒野の後継者》などの2マナクリーチャーと土地の枚数が多いことが特徴として挙げられます。
 本人はこの環境は土地事故や色マナトラブルで勝敗がつくゲームが多いと語っており、それが理由で土地の枚数を一般的なアブザンアグロのものより多めに取ったと言います。
 この大会がきっかけがどうかは分かりませんが、直後辺りから日本国内でもアブザンアグロは非常に人気なデッキタイプとなっていきます。

 そして最後にもう一つ、有名サイトのTCGPlayer.com 主催の大規模な賞金制の大会MaxPoint Championshipについて触れておこうと思います。
 この大会もまた、スタンダードの歴史を語るのに外せないものだと言えるでしょう。優勝と準優勝は、それまでやや元気のなかったマルドゥミッドレンジだったのです。
 マルドゥミッドレンジはプロツアー『タルキール覇王譚』ではジェスカイ、アブザンに次ぐ勢力だったのにも関わらず全く成績は振るわなかったということから、いわゆる負け組という印象を持たれてしまいました。
 しかしそういった印象はこの大会を機にマルドゥからは消え去っていきました。この大会で1,2フィニッシュを決めたマルドゥミッドレンジは、両方ともそれまではあまり採用されていなかった《軍族童の突発》と《岩への繋ぎ止め》を採用していたのです。特に《軍族童の突発》の発見が大きく、同期の《包囲サイ》に比べてやや活躍出来ていなかった《軍族の解体者》にとって相棒とも呼べる最高のカードだったのです。そしてゴブリントークンを生み出すのは《軍族の解体者》だけでなく、《ゴブリンの熟練扇動者》や《風番いのロック》との相性も抜群だったのです。
 このマルドゥミッドレンジは環境に大きな影響を与えました。新しい構築が広がったマルドゥは、すぐにメタゲームの上位に返り咲いたのです。
 これらはなんと「タルキール覇王譚」発売からわずか一ヶ月のメタゲームの変遷です。やはり新環境というものはプレイヤーのモチベーションを燃え上がらせるもの。その情熱が研究を次々に進ませ、この激動の一ヶ月を生み出しました。

5.11月第1週目
 11月になってもスタンダードの環境の盛り上がりは留まるところを知りませんでした。
 初週に行われたグランプリ・サンティアゴで優勝したのはアブザンリアニメイトでしたが、そのデッキには今まではあまり有名でなかったカードが投入されていました。それは《テーロスの魂》です。それまでは《女王スズメバチ》ミラーは一度睨み合うとなかなか突破法を見つけづらかったのですが、このカードはリアニメイトデッキにすんなりと入りつつ、そういった状況を一枚で突破することが出来るのです。
 《女王スズメバチ》と《エレボスの鞭》を投入したデッキはこの時点ですでに大きく広まっているデッキでしたが、《テーロスの魂》の発見によりさらにデッキパワーを高めることになりました。
 《テーロスの魂》が広まったきっかけとなった他に、このグランプリ・サンティアゴではそれまでややマイナー寄りであったティムールやスゥルタイといった氏族のデッキの入賞が目立つことが特徴として取り上げられます。特にティムールは3名ものプレイヤーをトップ8に送り込みました。逆に、先週までは隆盛していたジェスカイの姿が見えなかったのも注目です。

 しかしこのグランプリ・サンティアゴと同日にカリフォルニア州オークランドで開かれたSCG Openで優勝したのはジェスカイでした。
 ジェスカイといっても、それまで主流であったジェスカイウィンズと呼ばれる形のものではありません。ここで優勝したのは、プロツアーで『タルキール覇王譚』で注目を浴びながらもしばらく表舞台から姿を消していた《ジェスカイの隆盛》コンボだったのです。それもただコンボに特化したものではありませんでした。
 そのデッキはコンボによる勝ち筋の他に、《僧院の速槍》や《アクロスの十字軍》といった英雄的と果敢を持ったクリーチャーを採用することによってビートダウンによる勝ち筋を用意されていたのです。
 このデッキはそれまでのデッキとは全く違う、革新的なものでした。毎回新しいデッキが作り出されるこの混沌としたスタンダード環境は、プレイヤー達に全く飽きを感じさせなかったのです。

 一方で環境初期からの上位常連であるアブザンミッドレンジはその中身を環境に合わせて改良していき、時にはアグロやリアニメイトといった亜種を生み出しつつ、プロツアー『タルキール覇王譚』の頃からのトップメタの地位を揺らぎないものにしていました。

6.11月第2週、第3週目
 この2週間はスタンダードで行われたグランプリがなかったので、少し巻き気味で書かさせていただきます。
 しかしスタンダード環境に変化がなかったわけではありません。ここまで毎週新デッキが入賞しているというのにまだ変化があるのかと思われても仕方がないほどの激しい変遷っぷりでしたが、第2週にオハイオ州コロンバスで行われたSCG Openではそれまで表舞台には出てきていなかったデッキが上位入賞していたのです。
 そのデッキとは、3位に輝いた青白英雄的でした。青白英雄的デッキ自体の存在自体は大分昔からあり、「テーロス」ブロック構築どころか「テーロス」リミテッドでも青白英雄的というデッキタイプがあったほどです。
 とはいえトーナメント級ではないと思われていましたが、かの有名プレイヤーTom Ross氏が青白英雄的を使用してこのSCG Openで入賞したことがきっかけになって十分実用に耐え得ることが証明されたのです。現在用いられている除去は単体除去が中心であるのにも関わらずそれらの除去のコストがことごとく重く、それらを多用しているミッドレンジ系統のデッキに対して、軽いコストで除去を弾きながら重い一撃を繰り出せる青白英雄的非常に相性が良いデッキでした。
 Tom Ross氏は「《ヘリオッドの巡礼者》は新たなる《石鍛冶の神秘家》だ!」とまで語っていました。

 またこの大会では、前の大会での活躍以来勢力を増してきたマルドゥミッドレンジ、そしてそれが前のめりな戦略を取るようになったマルドゥアグロが入賞しました。TCGPlayerでの一発限りの偶然の優勝ではなく、マルドゥもトップメタの一角だということを証明する結果になりました。
 このマルドゥアグロは《血に染まりし勇者》や《脳蛆》など、除去に対して強いカードが多く積まれていることが特徴です。除去の効きにくい《血に染まりし勇者》や速攻持ちクリーチャー、《脳蛆》と《思考囲い》による8枚のハンデス体制、そしてそれらを後押しをするバーンカードと非常に攻撃的なデッキに仕上がっており、生半可な早さのミッドレンジやコントロールを素早く狩ることが出来ます。

 そして他にも青黒コントロールが久しぶりの入賞となりました。これだけ色々なデッキが環境に存在することからメタが読みにくい上に妨害手段も決して強いとは言えないこの環境はコントロールにとっては逆風と言えるでしょうが、パワーカード筆頭候補である《エレボスの鞭》《真面目な訪問者、ソリン》などのライフゲインや《女王スズメバチ》の数の暴力に対して耐性があるのは十分な魅力と言えるでしょう。

 第3週はスタンダードで行われたグランプリもSCGもなく、特に国内でも大きい大会があったわけではないので割愛させていただきます。この3ヶ月で唯一スタンダードのメタゲームに影響が何もなかった貴重な週であると言えます。

7.11月第4週目
 この週にはバージニア州リッチモンドにてSCG Openが開催されました。そろそろトップ8が全て見知ったデッキ内容ばかりになってもいい頃のはずでしが、どうやらこの環境はメタゲームの停滞を許してはくれないようでした。
 この大会で優勝を飾ったのは《ジェスカイの隆盛》コンボでしたが、その中身は初期のコンボ特化型でも、そして英雄的要素を取り入れたものでもなく、《軍族童の突発》や《急報》とトークンを生み出すカードをフル搭載したジェスカイトークンと呼ばれるようになったものだったのです。実は日本国内の大会でもジェスカイトークンは結果を残したことが10月の序盤からあったのですが、こういう大舞台で活躍を見せたのは初めてです。
 トークンスペルは《ジェスカイの隆盛》のパンプ能力を誘発しますし、そもそもトークン自体が全体パンプと好相性でした。
 またサイドボードには《カマキリの乗り手》が採用されており、従来のジェスカイウィンズとしても振舞うことが出来るのでトークンデッキでありながら全体除去だけで詰むことがないように組まれています。
 最初こそイラストのインパクトばかりに気を取られた《ジェスカイの隆盛》でしたが、今や無限の可能性を感じさせる素晴らしいカードとなったのです。

 そして準優勝もまた今まで大舞台では活躍することのなかったデッキでした。前環境ではお世話になった人も多いであろうエスパーコントロールが準優勝だったのです。
 プロツアー『タルキール覇王譚』以来コントロールは青黒二色で組まれることが多く、青白コントロールも前に一度結果を残して以来目立つ成績を残せていませんでしたが、ここにきて現環境用にチューンされた新しいコントロールが生まれたのです。
 しかしコントロールと言っても、青黒コントロールに比べるとカウンターはそこまで多くは取られておらずメインボードには《解消》のみで、 《悪夢の織り手、アショク》に《真面目な訪問者、ソリン》、《太陽の勇者、エルズペス》とプレインズウォーカーが多く採用されているのが一番の特徴であると言えるでしょう。
 二色の青黒コントロールに比べるとマナ基盤は脆弱なものとなってしまいますが、代わりに《真面目な訪問者、ソリン》と《太陽の勇者、エルズペス》という優秀なプレインズウォーカー、そして全体除去の《対立の終結》を採用できるのが白を入れるメリットであるでしょう。

 さらに続いて、なんと3位までもが革新的なデッキだったのです。この大会のデッキテクとして取り上げられたアブザンアグロでした。アブザンアグロというデッキタイプ自体はこの時点でもすっかり馴染みのトップメタのデッキでしたが、この大会で使用されたアブザンアグロは、従来の構築よりさらに前のめりな戦術を取ることに特化された形のものとなっていました。
 それまでのアブザンアグロはアグロという名前は付きつつも、クリーチャーはほとんどが2マナからスタートして5マナの《風番いのロック》まで採用されていました。しかしこのアブザンアグロは1マナである《血に染まりし勇者》と《万神殿の兵士》が8枚フルで搭載されており、《加護のサテュロス》や《かき集める勇気》といったクリーチャーをスペルが多く取られていたのです。アブザンアグロの切り札とまで思われていた《真面目な訪問者、ソリン》の枚数も抑え目になっており、とにかく速さを追求していることが分かります。
 しかしただでさえ色拘束の厳しい三色デッキで、しかもここまで低マナ帯を入れていると《マナの合流点》などによってライフの損失が大きくなってしまいます。もちろんそれは分かっていたようで、このデッキのサイドボードではそれをケアするための《ニクス毛の雄羊》もフルで採用されているのも光りますね。

 最後にもう一つ、5位の4色グッドスタッフにも注目しましょう。このデッキは青以外の四色で組まれており、マナ基盤にこそ不安を覚えるものの、代わりにデッキに採用されているカードはトップクラスのパワーカードばかりになっています。
 クリーチャーは《包囲サイ》と《軍族の解体者》、除去は《岩への繋ぎ止め》に《はじける破滅》、《残忍な切断》など、プレインズウォーカーは《龍語りのサルカン》《英雄の導師、アジャニ》《太陽の勇者、エルズペス》《歓楽者ゼナゴス》と非常に贅沢な構築になっています。
 使用者本人は強力なカードを全て採用したデッキを使ってみたかったというのがこのデッキを選択した理由だと語っていました。事実採用されているカードはほとんどこのスタンダード環境を代表するパワーカードですし、それらをマナクリと多色ランドで無理矢理デッキとしてまとめきっています。
 パワーカードばかりで構成されているという性質上、カードの叩きつけ合いになりやすいミッドレンジ系統には非常に有利が付きます。その代わりに極端に速いデッキや多く積まれている除去が全て死に札になるコントロール相手はメインでは不利となってしまいますが、サイドボードにはそれらの相性を改善する《思考囲い》《歓楽者ゼナゴス》《神々の憤怒》などが大量に投入されており、サイド後は多少戦いやすくなるそうです。

 もはやこのスタンダードはなんでもありなのか。上位に存在しているデッキタイプの数ならモダンとすらタメを貼れそうなほどに混沌しているこの環境の正解を見つけ出すことは出来るのでしょうか。


8.11月第5週
 11月の最後の週。ジョージア州アトランタで開かれたSCG Openで優勝を飾ったのはシディシウィップでした。初期こそはいまいちな印象を持たれていたスゥルタイも、ここにきてようやく大規模大会での優勝を経験する事が出来ました。
 相変わらず強力な《女王スズメバチ》と《エレボスの鞭》の両方をフルで積みつつも、相手のそれらには対抗出来るように《破滅喚起の巨人》と《苦悶の神、ファリカ》が採用されているところには注目です。
 そしてサイドボードには《悪夢の織り手、アショク》がフルで搭載されており、ミッドレンジデッキと戦う時には追加の勝ち筋としてサイドインすることが出来ます。

 久しぶりにグルールモンスターの姿を見ることも出来ました。
 メインボードには《スズメバチの巣》が取られており、クリーチャーデッキの攻勢を強烈に制限します。こういったコントロール相手には役に立たないカードがメインに入っているのを見ると、作成者はメタゲームをどのように読んでデッキを構築したかを垣間見れます。事実、この環境はクリーチャー主体のミッドレンジの数が割合としては多く、《スズメバチの巣》はそういったデッキに対しては素晴らしい抑止力になります。

 他には、この前のSCGで結果を残した1マナ帯のクリーチャーとパンプスペルを多く採用したタイプのアブザンアグロもトップ8入りしており、このデッキの地力の高さを伺えます。
 
 同じく第5週に行われたグランプリ・サンアントニオ。こちらの方で優勝したのはマルドゥミッドレンジでした。
 今や完全に勝ち組と化したマルドゥも、リストの中身を確認すると環境に合わせて調整されたということが伺えます。
 今まであまり姿を見なかったものの、このリストで採用されているカードは《静翼のグリフ》でしょうか。このカードは環境に多く制限する《包囲サイ》や《女王スズメバチ》の効果を完全に封じつつ、飛行持ちのクロック要因として非常に優秀です。
 また、2位は青白英雄的、3位はティムールミッドレンジ、4位はシディシウィップと、ここ最近頭角を表し始めたデッキが軒並み上位に揃っています。
 そしてベスト8まで見ると、なんとマルドゥ、ティムール、スゥルタイ、アブザン、ジェスカイの五つの氏族の全ての姿が確認できるのがこの大会の結果の特徴です。全ての氏族に活躍の場があり、チャンスがある。もしデッキタイプの多彩さが環境の良さと言えるのであれば、これほどの良環境は過去類を見ないほどでしょう。

 また、タルキールの氏族の他も上位に食い込んでいるのが面白いところです。一つは先ほども述べた2位の青白英雄的ですが、もう一つは赤スライタッチ《宝船の巡航》というデッキです。
 モダンでは赤単に《宝船の巡航》を足した形のデッキはすでに存在しており大きい存在感を放っていましたが、とうとうスタンダードでもタッチ《宝船の巡航》されるようになりました。
 また、ほぼ単色で組むことによってそれまでは色拘束が厳しいことから評価されづらかった《宿命的火災》を強く使えることにも注目です。《かき立てる炎》とは違って召集はないものの5点ものダメージを与えることができ、プレイヤー相手にはもちろん強力、そしてクリーチャー相手でも厄介な《包囲サイ》などを破壊することができます。

※編注
《宿命的火災》は相手プレイヤーを対象に取ることは出来ませんでした、申し訳ありません。

 世界選手権前の大規模大会はこれが最後でしたが、このスタンダードの環境の混沌さを象徴するかのような結果になりました。
 そして迫った世界選手権には、多くのプレイヤーの注目が集まっていました。

9.12月第1週目
 12月の初週には世界が注目する世界選手権が開かれました。個人戦で最強のプレイヤーを決定する世界最高峰の大会で、世界からわずか24名しか招待されません。
 このように普通のメタゲームとは違い、極めて特殊なメタゲームでのトーナメントになりますが、この大会の結果が我々のゲームに影響を及ぼすのは必至。当然、この大会結果もきちんとチェックしていきます。
 この大会の最終順位トップ4だけを確認するのであれば、上位入賞したスタンダードのデッキはシディシウィップが二名に、ジェスカイトークン、アブザンミッドレンジが一名ずつでした。
 しかしその結果は他フォーマットも含めたものであるため、スタンダードの結果だけを見る場合には不適切な結果です。スタンダード4回戦だけの結果を見ると、見事4-0したのはReid Duke氏の黒緑星座、そしてShaun McLaren氏のアブザン・ミッドレンジの二つ、そして3-0-1を含めるのであれば渡辺 雄也氏のジェスカイトークンです。
 もちろんわずか4回戦の試合であるので他の負けたデッキが必ずしも参考にならないわけではないですが、ここではこの3名のデッキについて振り返ろうと思います。

 Reid Duke氏が使用した黒緑星座は優秀なマナクリーチャー、《開花の幻霊》と《破滅喚起の巨人》による星座システム、そして《女王スズメバチ》と《エレボスの鞭》による強力なシナジーによって成り立つデッキです。
 自分と同じく《エレボスの鞭》を使用してくる人間が多いと読んだか、《苦悶の神、ファリカ》が2枚積まれています。相手の墓地を除外した場合は接死持ちトークンを生み出させてしまいますが、相手に《女王スズメバチ》を蘇生されるよりはマシですし、逆に自分の要らない墓地を除外することによって接死トークンを生み出すことも出来ます。また、このデッキは二色であるが故に信心も貯まりやすく、純粋に5/5破壊不能クリーチャーとして扱えることも評価出来る点でしょう。

 Shaun McLaren氏が使用したアブザンはプロツアー『タルキール覇王譚』の頃に近い、《太陽の勇者、エルズペス》などのプレインズウォーカーを中心とした非常に重い構築になっていました。Shaun McLaren氏以外にもこの世界選手権でアブザンカラーを選択したのは5名でしたが、その全員が最近多いアグロ型ではなく、《思考囲い》と《森の女人像》以外には2マナ以下のカードを一切採用しない構成でした。特にShaun McLaren氏のメインボードには《砂塵破》まで積まれており、この世界選手権のメタは低速であると読んだのではないでしょうか。

 そして最後に渡辺 雄也氏のジェスカイトークンは他のデッキとは一線を画するものでした。それまでのジェスカイトークンと同様に《ジェスカイの隆盛》を採用はしていますがコンボ要素は皆無であり、《紅蓮の達人チャンドラ》や《宝船の巡航》といった長期戦にも耐えられるようになったカードが採用されていました。
 渡辺 雄也氏はこのジェスカイトークンを使用してBIGMAGIC OPENでもトップ8に残っていましたが、この世界選手権のためにレシピは非公開でした。その甲斐はあったらしく、他国の選手にデッキリストがバレていなかったことが大きかったと語っています。

 また、残念ながら勝ち越したプレイヤーはいなかったもののこの世界選手権のスタンダードで最も持ち込まれたのはシディシウィップでした。このデッキの地力を高さを最も多くのプロに認められたということでしょう。
 二度目になりますが、極めて特殊なメタゲームでのトーナメントなのでその認めた強さというものが草の根の大会でも通用するかは分かりません。しかしこの大会で影響を受けてシディシウィップを使用し始めるプレイヤー自体は増える可能性は高いため、シディシウィップ自体に気をつける必要はあるかもしれません。

 この文章を執筆している当時はまだ世界選手権から日が浅いために、この結果がどれだけメタゲームに影響を及ぼしたかは今の私には分かりません。ただこの世界選手権がまた一つスタンダードを面白くするきっかけになれば、それは私にとっても喜ばしいことだと思います。

 さて、最後になります。世界選手権の後に行われたワールド・マジック・カップ2014についてです。
 チーム戦なので、これもまた特殊なメタゲームで行われた上に、デッキ数が多すぎるので軽く触れるだけにしたいと思います。
 ベスト8に残った国のチームで使われたデッキはこの混沌とした現環境らしく、本当に様々なデッキが持ち込まれました。その中でも数だけで言えば、マルドゥミッドレンジでした。その中のキーカード《軍属の解体者》はワールド・マジック・カップのトップ5カードにも選ばれました。
 次いで青黒コントロールが使用率2位でした。しかしその中身はほぼ全員全く異なり、この環境での構築の自由さが伺えます。
 同じく2位タイの使用率を誇ったのは黒緑でした。相違点として、アメリカとスロバキアが使用したものは従来出回っている構築に近いのに対して、韓国が使用したのはやや前に使われていた《書かれざるものの視認》を使用しているところでしょうか。
 逆に共通点は《苦悶の神、ファリカ》です。黒緑とシディシウィップを使用したプレイヤー全員が《苦悶の神、ファリカ》を採用しており、こちらもまたワールド・マジック・カップのトップ5カードに選ばれました。やはり同系戦での《エレボスの鞭》に対して強いところが評価されているようです。
 実は3名以上デッキが被ったのはそれらのデッキくらいでした。アブザンはミッドレンジとリアニメイトを別計算にしましたが、仮に同じ扱いにしても3名なのです。他にはジェスカイトークンやグルールモンスター、赤単、ボロス(赤白)ミッドレンジ、青白英雄的、ティムールミッドレンジなど両手の指でも数え切れない程のデッキタイプが使用されたのです。
 もちろんチーム戦という縛りがあるので、それらの数値が必ずしも通常のメタゲームにも活かせるとは限りません。とはいえ、これらの結果は新しいデッキタイプを生み出す助けにはなるのではないでしょうか。

 「タルキール覇王譚」発売から、この12月上旬までのたった2ヶ月と少しの間でどれほどスタンダードの環境が変わっていったのか伝わりましたでしょうか?
 私にとってもこの2ヶ月と少しの間のスタンダードは本当に嵐のように激しく変わっていったものだと感じました。
 しかし「テーロス」ブロック&「タルキール覇王譚」ブロックはこの先も続きます。スタン落ちの仕様変更などによって、またそれまでのスタンダードとは違う波が押し寄せてくるとは思います。しかしどのような環境であっても、私は楽しんでいきたいと考えています。

 以上、ここまで読んでくださった皆様方ありがとうございました。
 これから先のスタンダード環境も楽しんでいきましょう。


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