MTGのカードから学ぶガールズ&パンツァーその4 《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》
MTGのカードから学ぶガールズ&パンツァーその4 《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》
MTGのカードから学ぶガールズ&パンツァーその4 《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》
軽くて大きい、そんなワガママを体言したクリーチャーがそこにある。

Phyrexian Dreadnought / ファイレクシアン・ドレッドノート (1)
アーティファクト クリーチャー ? ドレッドノート(Dreadnought)
トランプル
ファイレクシアン・ドレッドノートが戦場に出たとき、パワーの合計が12以上になるように好きな数のクリーチャーを生け贄に捧げないかぎり、これを生け贄に捧げる。
12/12


 マナレシオ、という単語を御存知だろうか。
 MTG wikiから引用させてもらうが、『パワーとタフネスの平均を点数で見たマナ・コストで割った値』のことを指す言葉である。
 マナレシオがいいというのは、低いマナコストで高いステータスを持つことを意味する。一般的な用語で例えるなら、コストパフォーマンスなどが近いだろうか。
 マナコストは低い方が扱いやすいし、パワーやタフネスは高い方が役に立つ状況が多い。
 となれば、プレイヤー達が低いマナコストで高いステータスを求めるのは道理と言ってもいいだろう。まるでワガママ人事のように。新入社員にステータスを求めるのよくない。

 だが当然、低いマナコストで高いステータスを持つクリーチャーなど、そう簡単に存在しているわけもない。
 サイズが多くなればなるほど、その分マナコストも高くなる。現代マジックでは過去ほどマナレシオの基準値が低いわけではないとはいえ、基本的にはマジックが始まって以来、不変の法則の一つと言える。
 しかし、もしも1マナで他を薙ぎ払うサイズを持つクリーチャーがいたとしたらどう思うか?
 そんなのはまさに夢物語。あってはならないものだ。
 だが、そんな夢物語を実際に体言しているクリーチャーが存在している。
 そう、それが今回ご紹介したい《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》である。

 わずか1マナで12/12というサイズは、少しでもマジックを触ったことがあれば本来有り得ない程のものであることが分かる。
 マジック史上でもトップクラスのマナレシオを誇っており、事実《死の影/Death’s Shadow》が生まれるまでは一番高いマナレシオを持つクリーチャーであった。
 だが、当然ながらそのようなワガママボディが何のコストもなく許されるわけがない。
 その代償に、場に出る時に相応のクリーチャーを生贄に捧げなければならないというデメリットが付与されていたのだ。
 いくらマナコストだけが軽くても、他のコストがそこまで大きければ普通に運用するにはさすがに無理が生じる。

 しかしデメリットは大きいとはいえ、有り得ないサイズを持つクリーチャーであることは揺るぎ様のない事実。
 このデカブツをどうにか扱うため、今までに数多くの試行錯誤が行なわれてきた。
 今のエターナル環境で《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》を扱う有名なデッキと言えば、スタイフルノートであろう。
 《もみ消し/Stifle》や《幻視の魔除け/Vision Charm》などを利用し、デメリットを踏み倒し、恩恵だけ与ろうというデッキだ。
 他にも《投げ飛ばし/Fling》や《伏魔殿/Pandemonium》などでその大きいサイズを活かしたコンボなども生まれてきた。
 一度決まれば、そのまま相手を蹂躙することが出来る。
 扱うのに工夫や苦労は必要だが、ひとまち場に出れば圧倒的な戦力を誇る。まさに、イギリス戦艦ドレッドノートの名を冠するに相応しいクリーチャーと言えるだろう。


 このファイレクシアン・ドレッドノートも体現していたように、戦艦の名前にもなったドレッドノートという単語には圧倒的な強さを誇るという意味合いを持つことがある。(元々は恐れ知らずを意味する単語)
 あまりに圧倒的だからか、日本でも弩級という単語の元ネタになったほどである。
 なんと、戦車においてもこのようにドレッドノートと称された機体が存在しているのだ。
 ドレッドノートという誇れ多い呼び名を持つ戦車。
 それが一体なんであるか、あなたは御存知であろうか。














 答えは、KV-2。第二次世界大戦においてソ連が開発した重戦車である。
 あまりの火力と重装甲によって、ドイツ兵からはギガントと恐れられ、ソ連兵からはドレッドノートと親しみを込めて呼ばれた。
 ガルパンでは、プラウダ高校が使用する戦車として登場している。

 まさかファイレクシアン・ドレッドノートからプラウダの重戦車が紹介されると予測出来た者はおるまい。ガハハ。
 というわけで、続いてKV-2についても解説したいと思う。



 繰り返すがKV-2とはソ連が開発した重戦車であり、一目見れば驚く巨大な152mm榴弾砲と、ティーガーと同レベルの装甲を兼ね揃えている化け物である。
 その存在感は圧倒的であり、ドイツ軍との戦いでは40両の戦車を撃破しただとか、フィンランド軍の対戦車用砲48発を受けても損傷なく動き続けただとか、武勇伝には枚挙に暇がない。
 リトアニア国ラシェイニャイ市でのドイツ軍との戦いではたった一両で街道上に居座り、ドイツ軍の前衛と補給部隊を分担させ、二日間も戦い続けたという話もある。
 その最期も、装甲を突破されて撃破された訳ではなく、内部に手榴弾を投げ込まれてようやく動きを止めたというとんでもなく壮絶なものであった。
 劇場版ガルパンにおいてニーナが言っていた『街道上の怪物』という二つ名は、この強烈過ぎるエピソードが元となっている。
 まさに怪物と呼ばれるに相応しい戦車と言えるだろう。

 ……だが、大きいサイズを持つものはそれだけ運用が難しいというのはマジックでも戦車でも共通しているようで、KV-2もまた運用するに当たって多くの問題を抱えていた戦車であった。
 このKV-2のベースとなったKV-1も戦闘より故障によって壊れることが多いと言われていたが、そのKV-1と同じターレットリング(砲塔の回転部分)を利用しているのに砲塔は巨大になったため、砲塔を旋回するにあたって大きな制限が存在していた。劇場版ガルパンでも、この砲塔旋回がアダとなってエキシビジョンマッチでは白旗を挙げている。
 また、その重量から機動性も低く、さらに砲弾があまりに大き過ぎる為に採用する弾が分離装薬式──要するに組み立て式になってしまったこともネックであった。
 どうして弾が組み立て式なことがネックなのかといえば、当然それだけ装填するのに時間が掛かるということである。装填手も珍しく二名必要となってしまった。
 ガルパン本編では、みほに「次の装填までに時間がある」と冷静に対処されてしまっている。また、ガルパン劇場版ではわざわざニーナ達が分離装薬式の弾を込めているシーンが描かれていた。数多くあるマニアックなシーンの一つであろう。
 これらの弱点による故障率の問題、そして当時のソ連軍の運用方針の変更から、これだけ強烈なスペックを誇っていたにも関わらず生産は早々に打ち切られてしまい、いくつか有名な戦いはあるものの、残念ながら後から世界大戦を広い視点で見ればあまり大きい活躍は出来なかったというのが現実である。


 ガルパン本編においては、プラウダ高校のニーナ、アリーナの乗車する戦車として登場。
 大洗VSプラウダ戦においては、フラッグ車の護衛として参戦している。
 しかし先述の通りの装填速度の問題を突かれてしまい、弱点であるターレットリングをⅣ号、三突に狙われて撃破されてしまった。

 ガルパン劇場版にも再登場。エキシビジョンマッチでは神磯の鳥居付近の海から伏兵として突如現われた。この前ポケモンGOで話題になったジムの辺り。
 チャーチルを追う大洗、知波単連合に対して巨砲を発射。残念ながら戦車には命中しなかったものの、大洗ホテル、大洗シーサイドホテルを立て続けにぶっ壊したシーンは視聴者に対して大き過ぎるインパクトを残した。
 しかし、不安定な足場で無理矢理砲塔を旋回したことによってひっくり返ってしまい自滅。活躍は出来ずに白旗を挙げてしまう。現実でも、坂道などでは砲塔旋回を行なえないことが問題点として指摘されていた。

 その後、大学選抜戦にもプラウダ高校からの援軍として参戦。ひまわり中隊に配属され、二百三高地の上から援護すべく進軍を行なった。その機動力のせいか、坂道の道中にてカチューシャのT-34/85に追突されている。
 ちなみにこの時カチューシャが口に出していた二百三高地、エルヴィン達には負ける気か? と突っ込まれていたが、これがどういうことか大雑把に説明すると、日露戦争にて日本軍にロシアが奪取された中国の丘陵のことである。プラウダが持ち出すにはあまりに縁起が悪い戦いであり、突っ込まれるのは当たり前であろう。ちなみに勝った側である日本軍をモチーフにしている知波単の西隊長も二百三高地に嬉々として反応しているが、こっちはある意味正しい反応。激しい消耗戦でしたけどね。

 閑話休題。
 KV-2ら、ひまわり中隊は無事に山の頂上を奪取することに成功。高い所からの援護を行なおうとする。しかしその矢先にカール自走砲による襲撃を受けてしまい、早々に撤退を決め込む羽目になってしまった。
 しかし黒森峰とプラウダの重戦車の撃破を狙う大学選抜チームがそのまま逃走を許すわけもなく、ひまわり中隊を追撃。殿を務めていたカチューシャ車が狙い撃ちされてしまう。
 そこでプラウダのクラーラ、ノンナがカチューシャを逃がす為に道中にて盾役を決行。ニーナ達のKV-2もそれに続いて盾となることを決断する。
 道中にて盾となるその勇姿は、まさに『街道上の怪物』の再現と呼ぶに相応しいものだろう。
 残念ながらKV-2は一両も相手戦車を撃破することなくそのまま立ち往生を迎えてしまったが、プラウダの奮闘によってカチューシャらは逃げ切ることに成功。島田愛里寿による黒森峰プラウダ重戦車一掃作戦は、半分の被害によって凌ぐことが出来たのであった。
 ちなみにノンナが勝つために必要な方であるとまで言い切り、プラウダの面々が身を賭して守ったカチューシャがこの後の大学選抜戦でどれほどの活躍をしたかというと『パーシング二両撃破、レオポンさんチームへのアドバイス、アリクイさんチームへの砲撃のブロック、体当たりによるルミ車撃破のためのエリカへのアシスト』とプラウダの無念を完全に払拭するかのような戦いぶりを見せている。単に自分が撃破するだけではなく、アシストによる活躍が多いところに注目だ。普段傲慢な一面を見せながらもニーナ達が望んで盾役を買って出たのは、こういうところが慕われていたからなのだろう。

 KV-2はガルパン本編、劇場版双方にて一両も撃破することは出来なかったが、分離装薬式の装填や劇場版でも屈指の名シーンである『街道上の怪物』の場面など、見せ場は少なくない。
 特にホテル二つを破壊したところなどはド肝を抜かれた方も少なくはないはず。まさに、ドレッドノートと称されただけのことはあるということだろう。
 

 いかがであっただろうか。
 もしもファイレクシアン・ドレッドノートを見かけることがあれば、同じくドレッドノートと親しみを持って呼ばれたKV-2の勇姿を思い出してもらいたいものだ。
 12/12のサイズと運用の難しさ、まさにKV-2と似たような立ち位置にあると言えるだろう。

 マジックとガルパンを結ぶ線には、こんな隠し玉もあるというわけだ。
 次回もまた、マジックとガルパンを結ぶ線について紹介していきたいと思う。
 それでは、また。

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