センチュリオンは重戦車ではない。

《猛進する重戦車センチュリオン》
ゼクス
4/黒/ノスフェラトゥ/6000
[自]このカードが登場した時、あなたのチャージにあるカードを1枚選び、トラッシュに置いてよい。
置いたならば、ターン終了時まで、このカードのパワーを+3000する。


 我思う、マジック以外のTCGにもガルパンが詰まっているのではないかと。
 今回のこれは、それを証明するための第一歩他ならない。
 それでは進軍しよう、TCG界に散らばるガルパンの欠片を拾い集める為に。


 ということで今回のお題は大人気TCGゼクスより、《猛進する重戦車センチュリオン》である。
 黒のゼクスにありがちなチャージをトラッシュに送って発動する能力を所持する。
 能力を発動することによってパワーを9000にまで引き上げることができ、6コスト能力持ちまでなら倒すことが可能になる。
 フレーバーテキストに「不確定な未来よりも目の前の暴力。正義はパワーとともにある。」とあるが、能力がまさにそれを体言している。イグニッションという不確定な未来にチャージを消費するより、このカードの火力上げに利用した方が正義であるということだろう。

 ……が、悲しいことにこれ以上言うことがない。出来ることは一時的なパンプアップのみであるし、それ以外にできることがあるわけではない。
 収録された直後ですらあまり使われた記憶がなく、当時よりカードパワーが上がっている現状ではなおさらだ。
 このカードの愛好家(いるとは思えないが)がこの記事を読んでいたとしたら申し訳ないが、現状では完全に力不足であると言わざるを得ないのが現実だろう。


 さて、実質ここからが本番だが、センチュリオンと聞けばガルパンおじさんが思いつくものはただ一つ、”巡航戦車 A41 センチュリオン”だろう。
 劇場版ガルパンでは大学選抜チーム隊長・島田愛里寿の戦車として登場、ラスボスとして大洗女子の前に立ちはだかった。
 今回は、このセンチュリオンについて話をしていこうと思う。


 センチュリオンとは、第二次世界大戦期にイギリスで開発された巡航戦車である。重巡航戦車と表されることも多い。
 だが間違っても重戦車ではない。そもそも開発国イギリスでは一部の例外を除いて軽・中・重戦車という種別を用いてすらいない。基本的には歩兵戦車と巡航戦車の二種類である。(細かくは後述)
 さらにいうと当然、超重戦車でもない。開発国も違うティーガーと合わせて超重戦車 ティーガー・センチュリオンじゃねぇんだよお前だよヴァンガード聞いてんのかオォン?

 
 大戦中のイギリスの戦車開発は、残念ながらお世辞にも捗っているとは言い難いものであった。
 だからこそ故障率が高いことで有名だったクルセイダー巡航戦車であってもそれなりに長く使われ、後期になるとアメリカから供与されたM4シャーマンが戦力の中心となっていくのであった。
 しかし、M4シャーマンは非常に優れた戦車ではあったものの、それはどちらかといえば生産性や扱いやすさという点であり、一両一両の単騎性能だけで言えばソビエトやドイツの戦車には敵わなかった。
 そのためイギリスはドイツのティーガーを撃破可能である17ポンド砲を利用しようとするが、既存のイギリス戦車では砲塔が狭すぎてどれも17ポンド砲を乗せることが出来なかった。そこで、M4シャーマンを利用して開発されたのがシャーマン・ファイアフライである。クルセイダーとファイアフライについては過去記事にも細かいことを書いてるので、よかったらそちらもどうぞ。

 しかしファイアフライもベースはM4シャーマンのまま。決して弱点がないとは言えなかった。特に防御面。
 そこでイギリスは、この17ポンド砲を搭載しつつ、歩兵戦車と巡航戦車という今までの区分に囚われない重装甲と今までの機動力を持つ重巡航戦車の開発を始めたのであった。そうして開発されたのがA41センチュリオンである。
 戦後である現在では初期のセンチュリオンはセンチュリオンMk.1と表記するが、大戦中の名称という意味ではA41センチュリオンが正しい。ガルパン作中の電光掲示板でもきちんとA41センチュリオンと表記されている。細かい。

 そのセンチュリオンだが、ティーガーを撃破可能である17ポンド砲を搭載しつつ、高い防御力と機動性を併せ持った戦車であり、それまで初の戦車開発国であるにも関わらず後継が作れないことで定評のあったイギリス戦車開発の低評価っぷりを完全に覆すには十分なものであった。
 その素晴らしい設計はそれまでのイギリスの歩兵戦車と巡航戦車という区分を完全に一新するどころか、戦後の軽・中・重戦車という区別すらも塗り替え、現在でも使われる主力戦車(main battle tank、略称:MBT)という概念を作り出すにまで至った。だから重戦車ではない。
 ちなみにイギリスの戦車は中に湯沸かし器がついているのが標準と聞いたことがある人もいるかもしれないが、それの元となったのがこのセンチュリオンである。用途は当然紅茶を飲むため。アホなんだか凄いんだか。愛里寿が試合中にこれを利用したかどうかは定かではない。

 ……だが、いかんせん生産されるのが遅すぎた。
 これほどまでのスペックを誇っているにも関わらず、戦場のベルギーに到着する前にドイツが降伏してしまったため、大戦中に戦闘を経験することなく終わってしまったのである。
 M26パーシングもそうだが、もう少し早く生産されていれば大戦の歴史が少しは変わっていたのかもしれない。

 しかし、センチュリオンの基本設計が堅実で応用が非常に効くものであったため、大戦終了後も数多くの改良が続けられた。
 イギリスではMk.13まで改良が続けられ、他の国に売られたセンチュリオンも多くの派生を遂げており、派生系だけでも十を越える種類が存在している。それも全て、センチュリオンの基本設計がきちんとしているから出来た芸当であると言えるだろう。

 第二次世界大戦中に開発された戦車ではあるが、実質的にはそれより一つ後の世代の戦車と言える戦車である。
 戦車道の試合で使用することができる戦車は1945年8月15日までに設計が完了している戦車のみであるというルールであり、センチュリオンも一応ルールに則っているが、戦車道で利用できる戦車の中では完全に頭一つ飛び抜けたスペックを誇っていると言っていいだろう。


 ガルパンでは劇場版にて初登場。(一応、本編でもダージリンの好きな戦車として名前だけ登場している)
 VS大学選抜戦にて、島田愛里寿が搭乗した。

 愛里寿が後半までチームの指揮に徹していた為、しばらくの間はセンチュリオンも戦う機会がなかった。
 大学選抜チームが押され始めてきた後半にて、愛里寿がボコのうたを歌いながら進軍、遊園地跡に進入する。

 遊園地跡に入った直後、西、福田、玉田、細見、アヒルさんチームの五両にひよどり越え(鵯越えの逆落としのこと、源義経が馬に乗って崖を下った戦いと言えば伝わるだろうか)による強襲を受けるが、それに動揺することなく反撃に転ずる。
 1VS5の状況であったはずだが、悠々と攻撃を避けながら知波単部隊を撃破、アヒルさんチームによる特攻も回避しつつこれも撃破した。ワンターンファイブキゥ...こいつはすげぇ!

 内部に入ってからも留まる事はなく、ウサギさんチーム、カメさんチーム、アリクイさんチームを立て続けに撃破。この時点で大洗女子八両の半分を一両で沈めたことになる。
 さらにT型定規作戦を決行した直後のアンチョビ車を横から一閃、さらに池を挟んだカモさんチームとの撃ち合いもきっちり一発で沈め、これで計十両が倒されてしまった。

 中央広場にてアズミ、メグミと合流した後は西住姉妹と対峙。
 仲間が撃破されて1VS2の状況になっても一切動揺することはなく、速やかに反撃に移っている。
 まるで氷上を滑るスケーターの如く縦横無尽に広場を駆け巡り、数の上で勝っているはずの西住姉妹二両を完全に翻弄した。本編で勝負を決めたⅣ号必殺のドリフトによる回り込みにすら対応し、ティーガーの攻撃も悉く回避している。
 センチュリオンのスペックと愛里寿の指示能力の高さは言うまでもないが、戦闘を見る限り操縦手、装填手、砲手全てのレベルが相当なものであることが窺える。さすがセンチュリオンに搭乗しているだけはある、ということか。
 しかし絶好のチャンスをヴォイテクに気を取られたことによる指示の遅れによって逃し、最終的にはティーガーの空砲によって加速したⅣ号と相打ちに持っていかれてしまった。

 現実世界でも相当高い性能で戦車界を驚かせた一品であるが、ガルパン作中においてもまさにラスボスに相応しい活躍を見せた。
 特に360度回転しながら西住姉妹を相手取った際のギュイイイイインという音は耳にするだけで鳥肌が立ってしまうほど。今なお思い出すだけで脳裏にセンチュリオンの勇姿が浮かんでしまう。


 いかがであっただろうか。
 もし、今後《猛進する重戦車センチュリオン》や《超重戦車 ティーガー・センチュリオン》を見かけることがあったら、是非戦車のセンチュリオンのことを思い出してもらいたいものだ。
 とは言ってもこの二枚が今のゼクスやヴァンガードで使われてるかどうかは知らない。今私どっちもやってないし。もしかしたらカードはカードでもアメックスセンチュリオンカードの方が見かける可能性があるかもしれない。ちなみにクレジットのブラックカードのことである。年会費35万。


 マジックだけでなく、あらゆるTCGにもガルパンと通じる線が存在することが判明した。
 次回もまた、ガルパンへと続く線というものを探していきたい。
 それでは、また。



・過去作
MTGのカードから学ぶガールズ&パンツァーその1 《ホタル/Firefly》
http://gizamistar.diarynote.jp/201608040116537503/

MTGのカードから学ぶガールズ&パンツァーその2 《灰色熊/Grizzly Bears》
http://gizamistar.diarynote.jp/201608070214417100/

MTGのカードから学ぶガールズ&パンツァーその3 《ミラディンの十字軍/Mirran Crusader》
http://gizamistar.diarynote.jp/201608150130117645/

MTGのカードから学ぶガールズ&パンツァーその4 《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》
http://gizamistar.diarynote.jp/201608200134258316/

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